平成30年度都立高校入試【社会】入試問題分析

 入試問題分析, 平成30年度, 読み物  平成30年度都立高校入試【社会】入試問題分析 はコメントを受け付けていません。
3月 062018
 

【総論】難易度は例年と比べるとやや難しいと思われる。前年との違いは大問4・6での並び替えが1題増えて2題になったことによって完全正答しなくてはならない問題が計4題になったため正答率は下がったといえる。地理分野に関してはマニアックな国や県が出題されることはなく例年通りの出題範囲になる。歴史分野に関しては自校作成校と共通問題校との差を意識してか大問1の問2のように今で出題されなかった古代文明の範囲も出題された。また歴史は近現代で多少細かな年代を聞いてくるようになってきたので今後はやや細かな部分まで年表を暗記する必要性を感じる。公民分野では2000年以降の現代に関する問題が出題された。1900年後半までを押さえる以外にも今後は対策が必要になってくる。

今後のポイントとして地理分野はヒントとなるキーワードや表・グラフの特徴をもとに国名や県名を探せるようになることが必要になる。歴史はより細かい部分まである程度年表を押さえること。地理と歴史はどこを根拠に正解したのかが重要になる。なんとなく解いていては安定した成績を取ることはできない。正解以外にも他の選択肢はどれに当てはまるのかしっかりと確認することが高得点の近道になる。公民分野は平成から現代までの出来事をしっかり順序づけることが安定した成績を取るポイントになる。

以下大問ごとに難易度と概要の解説に入る。
なお難易度は標準・やや難・難の順とした。

大問1

問1 写真から正しい地形図を見つける問題。写真から高速道路・工場地帯を読めていれば難なく回答できる。【標準】
問2 説明文から古代文明の場所を特定する問題。初めての出題範囲になる古代文明が出題されたため正答率は低い。モヘンジョ・ダロなど今後はこの単元をしっかりと覚えていく必要がある【難】
問3  歳出の総額から歳出の項目を選ぶ問題。説明から計算で導き出せるが項目は歳出額の多い順に覚えておくことが必要である。【標準】

大問2

問1 雨温図と説明文から国を選ぶ問題。偏西風と暖流に気がつけば解答できる【標準】
問2 表からマレーシアを選ぶ問題。マレーシアの貿易での特徴を押さえること。また発展途上国か先進国かを1次産業から読み取ることがポイントになる。【やや難】
問3 表からそれぞれの国を当てはめる問題。アルミニウムはあまりヒントとして生かすことができないため説明文の中から地形的なヒントや日本の輸入量から判断していく必要がある。【やや難】

大問3

問1 説明文からそれぞれの県を選ぶ問題。各説明文の中に特徴的な説明が多く見られるためここは正解しておきたい【標準】
問2 鹿児島県を選ぶ問題。数値が似ていて選びにくい。火山灰が多く水田に向かないことと主な農産物を知っておかないと解けない。【難】
問3 資料を使った記述問題。資料をしっかりと読み取れば難しくはない。【標準】

大問4

問1 歴史の並び替え問題。キーワードから時代を推測するやり方を使えば難なく答えることができる。例年通り時代がわかりやすく分かれている【標準】
問2 引用文から同時代の説明をしている文章を選ぶ問題。江戸時代を示す文章が2つあるためにやや選びにくい。江戸の前期か後期かはしっかりと理解しておく必要がある。【やや難】
問3 明治時代の学制と同じ時期を選択する問題。似たような年代があり多くの受験生は苦戦した問題。江戸から大正までは今後年代を押さえていく必要がある。【難】
問4 明治から平成までの近現代の並び替え問題。昭和の並び替えで苦戦した受験生がいた。第2次世界大戦以降の出来事はしっかりと並び替えできるようにする必要がある。【標準】

大問5

問1 平等権の説明をしている選択肢を選ぶ。ここは正解しておきたい【標準】
問2 条例の説明をしている選択肢を選ぶ問題。ここも正解しておきたい【標準】
問3 グラフと説明文から読み取れることを記述する問題。グラフの後半部に着目して変化していることを述べれば正解できる。【標準】
問4 グラフと説明文から当てはまる年代を選択する問題。グラフから正解を導くこともできるがややグラフが読み取りにくい。ここはEUの発足年代から正解につなげる方がよい。従ってEUの発足年代は暗記しておきたい。【やや難】

大問6

問1 説明文から国名を当てはめる問題。各説明文にその国を表す特徴的なヒントがある。ここは正解したい。【標準】
問2 各説明文から当てはまる国を選択する問題。例年完全回答を求める問題は各大問に1つだったが2つに増えたことにより難しく感じる受験生が多くいた。ここも特徴的なキーワードが多く落ち着いて解けば正解できる。【標準】
問3 説明文の年代を選ぶ問題。環境会議は例年1992の地球サミットまでの出題だったが2002年の地球サミット2002が出題されている。ここの正答率は低い。今後は公民分野での年表問題はこの時期以降も出題される可能性がある。今後はこの単元ではしっかりとした準備が必要になる。【難】

 Posted by at 5:15 PM

平成30年度都立高校入試【数学共通問題】入試問題分析

 入試問題分析, 平成30年度, 読み物  平成30年度都立高校入試【数学共通問題】入試問題分析 はコメントを受け付けていません。
3月 062018
 
《本年度出題の概観》

昨年の平均点の低さを受けてか,本年度の問題は全体的にかなり易化したと評価できる。完全な揺り戻しといえよう。例えば,昨年度,大問1に移っていた変域の小問が大問3の小問1に帰ってきていたり,大問2の証明問題が模擬試験や一般の都立対策問題集などで検討され尽くされている円柱の表面積・底面の円周に関する出題だったり,大問5までも昨年比で明らかに問題の密度に低下が見られたりするなど,冒頭の評価を支持する事実が盛りだくさんといった風情である。

《当塾の都立共通数学への対策》

まず、取りこぼしが許されない大問1については、徹底した反復訓練により,想定されるありとあらゆる小問をドリル的に実施する。例えば,当塾の授業においては,授業内外でプリントを配布し,訓練開始当初は15分程度で,最終的には7~8分程度で満点を取れるようになるまで鍛える。次に,その他の大問については,難易度に若干の振れ幅があることを踏まえ,基本問題に絞って確実に得点できるように指導する。具体的には,①都立特化型問題の標準問題までを反復,②当該年度実施の模擬試験を,こちらで指定した個所を反復,といった具合である。定期テスト問題と質が異なるので,コツをつかんで得点が伸びるまで多少の時間を要するが,ここまでで,おおよそ杉並~井草といったレベルの志望生については,当該受験生の内申点にもよるが,おおむね十分な対策となりうる。

他方で,内申点が心許ない井草志望生や,豊多摩以上のランクの高校を目指す受験生については,これだけでは当然不足である。そこで,こうした受験生については,やや難レベルの出題まで貪欲に食らいついていけるよう,全国の公立高校の入試問題などで鍛錬する。特に,愛知や熊本,兵庫といった他県の問題は,難易度が高いうえに問題の質が良く,当塾指導者も積極的に授業に採用している。解答の流れを見抜く視野は,こうした問題に数多くに触れる中で鍛えている。従って,塾生は①宿題をこなし,②解き直しに取り組むことで自然と得点力が伸びる。

《参考:本年度当塾塾生の数学平均点 70.4点》

なお,部分点のある問題については,生徒からの聞き取りのもと,都教委発表の採点基準に照らして,おおよそで採点。証明問題の配点14点のうち,①0点…5.6%,②5点…5.6%,③7点…38.9%④8点…11.1%⑤10点…33.3%⑥14点…5.6%,となった。

以下に,本年度数学共通問題の若干の解説を添付します。
本年度数学共通問題の解説はこちら

高校受験部統括 野中

 Posted by at 5:10 PM

平成30年度都立高校入試【英語共通問題】入試問題分析

 入試問題分析, 平成30年度, 読み物  平成30年度都立高校入試【英語共通問題】入試問題分析 はコメントを受け付けていません。
2月 282018
 

今年度の英語も前年度と同じくらいの難易度であると思われる。前年度から引き続きリスニング問題のBにおいての1問が選択問題であること,大問3がすべて選択肢である点、大問4の英問英答の問題が選択肢で答える形式の問題が継続された点から平均点は60点を越えると思われる。また各長文自体の長さも,大問4が多少長くなったがそれでも短い。さらに,問の前後をしっかりと読むことによって選択肢を選ぶことができ,読み取った長文を深く考える設問もない。以上のことから,今年度の英語も得点差がつきにくいため,確実に得点を重ねる必要のある問題であったと思われる。

都立の英語で確実に得点をとるためにはまず長文読解が鍵になる。まずは全体の文意を押さえられるようになることが大切である。次に,都立英語共通問題は,私立に比べ文法自体が問われることがないので,長文を通して知らない単語の意味を押さえること。また関係代名詞や不定詞の含まれた訳しにくい文章を正確に訳していくことが近道になる。単純に言うなら,読み慣れに比例して得点が上昇するので,得点テクニックに頼るのではなく,初見の英文を読みこなす練習に時間をかけて読解力を伸ばすことが大切である。

また大問2の自由英作も苦手意識を払拭して,少なくとも全て書き切るトレーニングをしたい。対策としては,It構文や動名詞を使った文章を作ることができるようにしておくとよい。

長文読解力と英作文の力は,高校入学後も間違いなく生きてくる。難易度が低いことに引きずられることなく,中学の英語を自在に操ることのできる高いレベルの力を身につけることを目標としたい。

 Posted by at 7:20 PM

平成29年度都立高校入試【英語/共通】入試問題分析

 入試問題分析, 平成29年度, 読み物  平成29年度都立高校入試【英語/共通】入試問題分析 はコメントを受け付けていません。
3月 062017
 

今年度の英語は易化の傾向にあると思われる。理由は3点。1つ目はリスニング問題のBにおいて2問とも例年単語や文章で回答する形式であったが、今年は1問は選択問題となった点。

2つ目は大問3にも必ず空欄に単語を書かせる問題が存在していたが今年はすべて選択肢であった点である。

3つ目は昨年と同じく大問4の英問英答の問題も文章で答えるのではなく選択肢で答える形式の問題が継続された点があげられる。さらに各長文自体の長さも変わらず難易度の高い単語も存在しない。また問の前後をしっかりと読むことによって選択肢を選ぶことができ、読み取った長文を深く考える設問もない。以上のことから今年度の英語は得点差がつきにくいため都立合格を目指すうえでは間違えてはいけない問題であったと思われる。

やや脱線するが,大学受験まで視野を広げて問題を眺めてみると,都立入試の英語共通問題で9割以上の得点をとったとしても,高校入学後,そして大学入試を次の目標と考えた場合,英語の力があるとは言いがたい。都立の共通問題は,文法や語彙についての要求がかなり低いということである。受験生としてきちんと得点できたことはもちろん誇りに思ってよいが,大学入試では文法と語彙の力を持つことが最低限の要件である。今後の英語の勉強についてはより一層のレベルの向上を期待したい。

 Posted by at 6:46 PM

平成29年度都立高校入試【社会】入試問題分析

 入試問題分析, 平成29年度, 読み物  平成29年度都立高校入試【社会】入試問題分析 はコメントを受け付けていません。
3月 062017
 

難易度は例年とほぼ同じであると思われる。前年との違いは、大問2でここ10年扱われていなかったアイスランドやキューバの特徴を選ぶ問題が出題されたこと。
大問4で選択肢4つを使いグラフの読み取りの説明文を完成される問題が出題されたことがあげられる。
また自校作成校と共通問題校との差を意識して大問6の問1のような教科書の範囲を超えた問題も出題された。以下大問ごとに難易度と概要の解説に入る。
なお難易度は標準・やや難・難の順とした。

大問1
問1 文章と写真をヒントに移動経路を地形図に記す問題。しっかりと説明が読めていれば難なく回答できる。【標準】
問2 説明文から世界遺産の場所を特定する問題。去年ほど難しい説明ではなくここも難なく回答できる【標準】
問3  文章で述べられている公民の用語を回答する問題。前年まで漢字指定で回答する問題だったが選択肢に変更となる。平等選挙と普通選挙の違いを押さえておく必要がある【やや難】

大問2
問1 アイスランドの説明をしている選択肢を選ぶ問題。アイスランドの位置と気候を把握していなければ難しい問題となる。過去問などでもあまり出題されない国であるためやや難しい。【難】
問2 キューバに関する説明をしている選択肢を選ぶ問題。問題で示されている国がキューバであることを理解できるかどうか。またキューバが社会主義国であるという知識がないと回答できない。【難】
問3 説明文とグラフの読み取りから南アフリカ共和国を探す問題。指示に従って条件に当てはまる選択肢を選ぶ。【標準】

大問3
問1 山形県の説明をしている選択肢を選ぶ問題。紛らわしい選択肢もなく東北地方が米の生産が盛んであることを押さえれば難なく回答できる。【標準】
問2 大阪港を選ぶ問題。港湾の位置と電気製品をヒントに大阪港を選ぶ。ヒントも少なく探しにくい。【やや難】
問3 資料を使った記述問題。資料をしっかりと読み取れば難しくはない。【標準】

大問4
問1 歴史の並び替え問題。キーワードから時代を推測するやり方を使えば難なく答えることができる。例年通り時代がわかりやすく分かれている【標準】
問2 文章で述べられている時代を年表から選ぶ問題。元禄文化が江戸の前半と後半のどちらになるのかを理解していないと間違えてしまうようになっている。前年より間違えやすい【やや難】
問3 グラフの読み取りを説明していく問題。新傾向の問題であり完答しないといけないため正答率が低くなるだろう。原材料の輸入と輸出の読み取り、さらに貿易の仕組みを理解しておく必要があり難しい。【難】
問4 大正時代を選ぶ問題。大正時代を象徴する単語(今回はラジオやサラリーマン)を
知っていればすぐに回答できる。またわからなくても消去法を使って解答にたどり着くこともできる。【標準】

大問5
問1 経済活動の自由の説明をしている選択肢を選ぶ。経済活動の自由の中に財産権の項目が入っていることがわからないと解けない【やや難】
問2 株主の権利についての問題。一般的な株主の権利を聞いているので難しくはない【標準】
問3 2007~2011年の経済の状態を選ぶ問題。新傾向の問題。ここ5年でここまで最近のことを問われたことがなかった。ただし説明文をしっかりと読めば正解にたどり着けるようになっている。【標準】
問4 説明部が示している時期を年表表から選ぶ問題。説明文とグラフのⅢに注目できれば難なく解ける【標準】

大問6
問1 説明されている国を選ぶ問題。難易度が一番高かった問題。完答ということも影響している。ムガル帝国・ドイモイ・アステカ・オスマン帝国といった単語から国を類推する深い知識が必要とされている問題である。【難】
問2 説明されている時期をグラフから答える問題。原油の総輸入数と中東依存度を正確に読めれば正解にたどり着ける【標準】
問3 グラフから記述をする問題。日本が順位を下げていることと他の2か国が順位を挙げていることをグラフから読み取れればよい。【標準】

 Posted by at 6:30 PM

平成29年度都立高校入試【数学/共通】入試問題分析

 入試問題分析, 平成29年度, 読み物  平成29年度都立高校入試【数学/共通】入試問題分析 はコメントを受け付けていません。
3月 042017
 

【総論】
全体的に難化。特徴的なのは大問3であろう。値域を求める問題が大問1にずれ込み、その関係で1問分、応用問題が追加されている(後述)。また大問2はさらに磨きがかかっている。共通問題としてはかなりの難度ではないか。そのほかの大問にも若干の変化がみられる。このようなことから、昨年よりは平均点が低下するだろうことが予想される。ただ、当塾としてはこうした傾向を歓迎したい。地域間・学校間で明らかに存在する内申点格差を是正・逆転する絶好の機会ととらえるためである。

【各論】
以下に若干の解説を加えつつ、本試験問題に関してコメントを記す。

大問1 小問集合
(1)~(6) いつもどおりの問題であり、1問の失点も許されない。【基礎レベル】
(7) ここで若干の衝撃がある。通常、資料の整理などの問題が出題される本小問で、どういうわけか値域を求める問題が出題されている。これは、前述したとおり大問3を難化させるための布石だったといえる。もっとも、ここで特筆すべきはこのことのみで、難易度自体はいつもの共通問題である。失点は絶対に許されない。【基礎レベル】
(8) いつもの確率問題。コメントするとすれば、余事象を使うと早い、ということくらいか。【基礎レベル】
(9) 円周角の単元での、「中心角・円周角は、弧の長さに比例する」をきちんと使いこなせないと解けない。そのうえで、角の二等分線を作図すればよいのだが、現場で何をすればよいか途方に暮れた受験生がいたのでないか。例年より難しい。【標準レベル】

大問2 規則性・数式の証明
本大問は、昨年で難化傾向がみられ、そうした傾向がさらにとんがったものと評価できるのではないか。都立共通問題の中では過去にないレベルの出題だろう(とはいえ、他の道府県の問題と比べると標準レベルだが)。
(1) 本問は規則性の問題だから、まずは現場で手を動かす必要がある。規則性の発見が最初。書き出せば簡単に正解肢を選べる。選択問題だから多少の計算ミスがあっても近いものを選んで逃げることもあるだろう。その意味で難易度は若干下がる。【標準レベル】
(2) これも書き出せばよい。しかし、試験現場の異様な空気の中で冷静にその作業ができる受験生がどれほどいただろう。こうした問題を解き慣れていないと、書き出し作業でミスが生じ、ゴールまでたどり着けないだろう。勉強の時はリラックスして解けるからひっかかりが少ない作業も、緊張状態の中ではなかなかつらかっただろう。その点を加味すれば、難易度の評価は上がる。【やや難レベル】

大問3 関数
(1) 直線ℓ上の点だから、Pの座標の検討にあたっては、x座標を素直に代入すればy座標が得られる。確実に得点したい。【基礎レベル】
(2)① 特筆すべき点である。本来このタイプの問題は本大問の最終設問である。それが、【総論】にて述べた通り、1問前倒して登場している。問題の難度は、頂点を通る直線が三角形を2等分するという問題に過ぎないから、知識問題の域を出ない。【基礎~標準レベル】
② 底辺が共通している三角形の面積比の問題、または、三角形ABCの中での小さく分かれた三角形の面積比の問題。前者のとらえ方をすれば、頂点A・Dからそれぞれの底辺である辺CPに対してy軸と平行な線分をひっぱり、それらの線分比を求める。座標平面上での線分比は、共通問題の中では難しい問題になる。これに対して、後者のとらえ方をすれば、AP:PBとCD:BDの線分比から各々面積比を求める、といった解法をとることとなる。相似の知識も求められており、やはり座標平面上で平面図形の解法を連動させることとなることから難易度は高いだろう。筆者は、まるで愛知県などの過去問を解いている錯覚に陥った。なお、そのほかにも解法がありうるところであることは断っておく。【やや難レベル】

大問4 平面図形・証明
(1) 大問1(9)と同じタイプの問題といえようか。弧の長さを聞かれていることから中心角に注目するという方法が思いつけることがポイント。点Qと点Oを結べばおしまい。とはいえ、こうした問われ方は共通問題の中では極めて珍しいのではないか。【標準レベル】
(2)① 例年の図形証明問題よりは多少難化している。本小問もいくつかのアプローチがあろうが、(語弊があるが)直径に対する円周角、直角三角形の角度に関する知識(または模範解答のように錯角を用いること)により証明がなされる。【標準レベル】
② 仮に本小問①の証明ができなくても、その事実を用いて解けばよい。簡単な相似を用いるだけであり、解答は比較的容易といえよう。【標準レベル】

大問5 空間図形
(1) 線分の長さを求める方法はいくつかに限定されるところ、本小問では三平方の香りが嗅ぎ取れるのではないか。そして、勝負はここから。つまり、どの三角形の辺としてMPをみるか。これについては、現場で試行錯誤するしかないのではないか。気付くためのポイントとしては、MもPも各線分上の中点であること。ここから中点連結定理などを引っ張り出せれば、①MからBDへ垂線を引くことと、その足をHとし、②PHを結ぶことで、めでたく△MPHという、いわゆる3:4:5の直角三角形を作り出せるのではないか。
いずれにしても、50分というタイムプレッシャーの中で、そこまで試行錯誤できる受験生がどれほどいるか。かなり難しいと評価すべきではないか。
なお、本小問は選択問題であり、かつ、解答の形式から一桁の整数であること、たとえばAB=8を基準にしたとき、MPはそれよりは短いうえ、常識的に見て0~4あたりという長さではないだろうという直感が働くことからすると、解答の候補として5または6のどちらかだろうというところまで絞れてしまうかもしれない。そのように見たとき、もちろんまったく数学的な解き方ではないが、空欄で提出するよりは何かを埋めたほうが良いのは受験生心理として当然のことだから、勘で正解を狙う、ということもあってよいだろう。5点は大きい。【やや難レベル】
(2) まず三角錐全体をD-ABCとし、底面を△ABCとみることができれば、求める図形はまず面積がどれほど小さくなるのか、という面積比の問題であることがわかろう。次に、高さの比を相似な図形の線分比の知識で求める。定型問題であり、ある程度問題演習で鍛えてきた受験生にとってはむしろ小問(1)よりも解きやすいといえよう。去年の体積比の問題よりは易しい。【標準~やや難レベル】

【対策】
以上述べてきた通り、本年度の数学は難化している。本年度の5科目の中では最も難しかったのではないか。対策としては、もはや都立共通問題の過去問だけではなく、他の道府県の問題にも果敢に手を出すべきだろう。旺文社の全国高校入試問題正解などを用い、公立高校の問題については全国制覇するくらいの気概があれば、来年度の問題でにっこり笑うことができるはずだ。

 Posted by at 6:02 PM

平成29年度都立高校入試【理科】入試問題分析

 入試問題分析, 平成29年度, 読み物  平成29年度都立高校入試【理科】入試問題分析 はコメントを受け付けていません。
3月 012017
 

【総論】
昨年度との比較で多少の易化が認められる印象である。正確な知識がないと選択肢が絞り切れないというタイプの問題が昨年より減少したことがその原因と思われる。平均点の上昇が見込まれる。なお、例年、受験生が苦手としがちなイオンや天体が大問としては出題されなかったのも(いかに昨年既出とはいえ)多少意外であった。昨年度の難易度の高さ(平均点の低さ)から都教委が揺り戻しを図ったことの表れかもしれない。

【各論】
以下に若干の解説を加える。なお、後日修正が入ることがありうる。ご了承されたい。
大問1 小問集合
(1) 粘り気の原因としてケイ素が挙げられること、ケイ素がガラスの原料であることなどから溶岩の粘り気のもととなっていることを知っていれば、色や火山形成にどのようなかかわり方をするかが了解されているはず。正解を選ぶのは容易。【基本レベル】
(2) 電圧がかかることで各イオンが電極に引っ張られること、陰イオンである水酸化物イオン(OH-)がアルカリの正体であること、アルカリは赤いリトマス紙を青く変色させることの3点を知っていれば正解を選ぶことができる。【基本レベル】
(3) 対立遺伝子、優性の法則がわかっていれば解ける。【基本レベル】
(4) 右ねじの法則と磁力線の意味が分かっていれば容易。【基本レベル】
(5) タンクの図から気体状の原油がどのように冷えるかということが推測でき、沸点の意味と蒸留の意味をきちんと理解していることを条件に解くことができる。【標準レベル】。
(6) 電流計・電圧計のつなぎ方、とくにそれぞれの接続部位がきちんと頭に入っていれば容易。【基本レベル】
(7) 一般的な月の周期を表す図をイメージできれば簡単に解ける。【基本レベル】

大問2 小問集合
(1) 密度と浮き沈みとは、決まった大きさ(体積)に対する質量で決まる(密度の理解)ということが分かっていれば、単なる掛け算の問題。【基本~標準レベル】。
(2) サンショウウオが両生類であることや、両生類の表皮が粘膜であること、両生類が変温動物であることがわかっていれば何も悩まない。【基本レベル】
(3) 屈折がこのようにきかれるのは少々珍しいかもしれない。とはいえ、本来知識として知っていなければならないはずの屈折の様子を説明している点で、かなりレベルが引き下げられている。【標準レベル】。
(4) 流水の運搬作用の理解、粒の大きい順(れき・砂・泥)に河口付近に沈殿するとの当たり前のことを覚えていればウかエに絞れる。そして、露頭ないし柱状図の問題では、同じ高度同士を結んで比較するという解法を身に着けていれば、ずれが5-1=4mであることは容易に判断できる。【基本~標準レベル】。

大問3 天気・水蒸気量
(1) 天気記号、風向きの意義と、低気圧に生じる前線を境界とした寒気・暖気の配置が身についていれば何も迷わない。【基本レベル】
(2) 寒冷前線の通過により、どのような温度変化・天候の変化があるかがわかっていれば、それだけで正解が選べる。時間帯は判断できる必要がないといえる。【基本~標準レベル】。
(3) 台風の位置だけで判断できる。偏西風の影響が下敷きに判断できるはずだが、日ごろ天気予報に興味を持ってみている受験生であれば容易な問題だったことだろう。【基本~標準レベル】。

大問4 消化
(1) デンプンに作用する消化液と、消化の結果何に変化するかという基本知識のみで解ける。【基本レベル】
(2) 触媒としての酵素に最適温度があることがわかっていれば、結果2を見なくても選べる。【基本~標準レベル】。
(3) 単なる知識問題。【基本レベル】。
(4) セロハン膜の実験問題を解いたことのない受験生はあまりいないだろう。もしも知っているのであれば、既知の実験結果から解答を逆算すればよい。要は、消化・分解前のデンプンは大きな構造で、唾液により分解された糖は論理的に考えてデンプンよりは小さな構造となるということから判断する。この問題を知らない受験生が僅少ながら存在するだろうことを考慮して【標準~やや難レベル】の問題といえるだろうか。あまり正答率は高くならないものと思われる。

大問5 化学反応
(1) 結果1・結果2から、Aが食塩、Bが炭酸水素ナトリウム、Cが砂糖、Dが酸化銀、Eが酸化銅であることがわかる。これが判断できないようではいけない。そして、BTB溶液の反応がわかっていれば選択肢が切れる。【基本~標準レベル】。
(2) 金属の性質と酸化銀の化学式がわかることを前提として、化学反応式(原子の個数合わせ)が書けるなら迷うことはない。【基本~標準レベル】。
(3) 還元という必須知識が言葉で説明できれば良いだけの問題。論述問題ということに敷居の高さを感じる受験生がいるだろうことを考慮して、【標準レベル】の問題といったところか。

大問6 力学的エネルギー
(1) 質量100gの物体に働く重力を1Nとする、というよくある定義を覚えている受験生がほとんどだろうから、このことと実験結果から正解肢は明らか。【基本~標準レベル】。
(2) 昨年度の大問1(2)で既出である。これを間違えた受験生がいるとすればそもそも勉強不足としか言いようがない。【基本レベル】
(3) グラフの作成方法は懇切丁寧に問題文がすべて述べてくれている。何も迷わず指示に従えばよい。【基本レベル】
(4) 木片の移動距離から、小球Aのエネルギーの方が大であることがわかる。【標準レベル】

【対策】
上記解説にて触れた通り、全般的な問題が【基本レベル】ないし【基本~標準レベル】に落ち着いている。しかし、それは確実な基礎知識を前提とすることは言うまでもない。たとえば大問1・2で許される失点は多くても2問までだろう。それ以上に間違えるようではいけない。
来年度以降の受験生は過去問の解き込みを含め、多くの問題演習を実施しておく必要が依然として認められる。解答に当たって、作図やグラフ作成などの問題は現場で正確な判断が要求されることから、また、つまらないミスを減らす必要からも、演習量の確保は重要である。

 Posted by at 1:16 AM

平成28年度都立高校入試【社会】入試問題分析

 入試問題分析, 平成28年度  平成28年度都立高校入試【社会】入試問題分析 はコメントを受け付けていません。
3月 032016
 

【総論】

全体的に例年並みか、もしくは若干難しくなった印象(ただし、平成26年に出題された内容が複数見られることから、過去問をきちんと研究した受験生はかなり活躍できたものと思われる。)。出題傾向に変化がみられる。以下、【各論】では、まず第1として今年の問題に検討を加え、続いて第2として、上記出題傾向の変化を踏まえた社会の入試対策の在り方について私見を述べたい。

【各論】本年問題の検討と若干の解説

大問1 小問集合

小問1 地理分野からの出題で時差計算。マイナス9時間なので、1時間=経度15度の関係から、マイナス135度。よって本初子午線に重なるから【解答】イ。

小問2 歴史分野からの出題。徳川光圀が水戸藩の藩主であること、水戸は現在の茨城県に相当することから【解答】ア。

小問3 公民政治分野からの出題。控訴、上告といった文言から【解答】三審制のこととわかる。

大問2 地理分野

小問1 表Ⅰについてみると、米が1位のアは中国(C)、トウモロコシが1位のウがアメリカ(A)とわかる。そして、全体的に穀物生産量が少ないイがガーナ(D)。残ったエがオーストラリア(B)となる。次に表Ⅱをみると、温度のグラフにつき、6~9月頃に低下していることから南半球であるとわかり、降水量と総合すると温帯(とくに西岸海洋性気候)とわかるので、選択肢のなかのガーナとオーストラリアで比較すればオーストラリア(B)の雨温図であることがわかる。よって、【解答】エ。

小問2 国民総所得から、先進国の一つであるイギリス(Z)がウ、漁獲高および日系現地法人数の多さからタイ(X)がエ、総所得が低いこと、また、豚の飼育頭数が極端に少ないことからエジプト(Y)がアとわかり、牛の飼育頭数が極端に多いことからアルゼンチン(W)がイとわかる。よって、【解答】イ。なお、イギリスでは羊毛を取るためにぺニン山脈の東側で羊の飼育が多いことも手掛かりになりうる。また、イスラム教では豚が忌避されていることとエジプトとの地域の関連から上記の推論が成り立ちうるだろう(なお、エジプトの国教はイスラム教)。加えて、アルゼンチンのパンパでは小麦の生産が盛んであること、その周囲の乾燥地帯では牛の放牧が盛んであることを知っていれば選択肢が切れる。

小問3 地図Ⅰは地中海性気候の国々をさし、農産物として思い浮かぶのは冬の小麦、夏のオレンジ・ブドウ・オリーブなど。次に地図Ⅱをみると香川県が指示されていて、過去問を研究していた受験生はピンとくるものがあったのではないか。平成26年入試で出題されていた(直接問われていたわけではない)オリーブの話である。よって、選択肢を吟味するまでもなく【解答】はウ。なお、コーヒー(ア)・バナナ(イ)については、香川県では栽培が盛んではなく、ブドウ(エ)の生産高1位が山梨県なのは常識(その山梨ですら表Ⅲにみられるように9割を超える生産をたたき出しているわけではない)。上記過去問を見たことが無くても容易に正解を導けよう。

 

大問3 地理分野

小問1 記述の第1段落、「この県の……製造品出荷額は8兆2000億円で、この県が属する地方で最も多くなっている」とある。九州地方、山陰・瀬戸内・四国地方、近畿地方、中部地方、関東地方、東北地方、北海道地方といった標準的な地理の教科書的区割りをイメージして地図Aをみると、あてはまるのは福岡県しかない。よって、【解答】イ。なお、第2段落は北九州工業地帯(地域)の過去と現在を述べており、教科書にも明確に記述がなされているところだから、知識として知っておきたいところ。

小問2 表Ⅰを見ると、茶、みかんといった品目からアは静岡県(②)、日本なしがあるからイは鳥取県(③)、りんごとあるからウは青森県(①)、畜産が盛んなのでエが宮崎県(④)とそれぞれわかる。次に文章Ⅱをみると、第1文・2文より、選択肢中「西部及び中部地域」に「海岸沿いに平野が発達している」とあり、「台地」があるとされていることから静岡県が疑われる。そして、第3文より、表Ⅰアについて「米、野菜、果実、畜産に分類されない農産物の農業産出額」を概算すると、上記4品目の合計が約70%。残り30%の額を計算すると、2138億円×(100%-70%)=約600億円とわかる。したがって、アが上記説明に合致することがわかる。よって、【解答】ア。

小問3 読図問題。アは、「桜井と小浜を結ぶ道路の南の地域」では「開発」後に「複数の工場や発電所が建設」されているわけではないことから誤り。イは、「埋め立て」が進んだ後、「工場を取り巻くように桑畑や果樹園」ができたわけではないから誤り。ウは、「桜井と小浜を結ぶ道路の南の地域」に、「開発」後、「県や市の官庁が置かれ」ていないから誤り。エは、その通り。よって、【解答】エ。

大問4 歴史分野

小問1 アは「稲作……が伝わり」とあるから弥生期、イは「宋」から平清盛あたりを連想できれば平安末期から鎌倉直前期、ウは「聖武天皇」とあるから奈良時代、エは「明」・「足利義満」とあるから室町時代とそれぞれわかる。よって、【解答】ウ。

小問2 文章Ⅱに「伊能忠敬」とあり、このことから江戸期を選べばよいとわかる。その前期・後期の別が判断できなくても、ウには江戸「幕府」が存在しない時代が含まれているなどの手がかりから解答をひねり出せるのではないか。よって、【解答】エ。

小問3 記述問題は、各資料から読み取れることを端的に指摘して、破たんのない日本語でつなげば解答になる。まず、地図Ⅰから、坂本・大津といった港に非常に近接した場所に馬借があることから、海上交通と陸上交通の結節地点が坂本・大津であり、馬借が京都への陸上輸送手段であったことがわかる。次に表Ⅱから、北陸地域の具体的名称・輸送品目がわかる。さらに表Ⅲから、琵琶湖水運が利用されていたことがわかる。もっとも、表Ⅱ・Ⅲの内容は地図Ⅰからほぼ読み取れることであり、これらの資料は、そうした内容をきちんと解答に盛り込んでほしいという都教委からのメッセージだと思われる。

小問4 Aは、「ポーツマス条約」とあり、これが日露戦争の講和条約であることから、1904年ころ(正確には1905年だが、それがわからなくとも問題なし)の話を指していると判断できる。Bは、「東海道新幹線」とあり、その開通が1964年であることはできれば覚えておきたいところだが、それを覚えていなくても他の選択肢との兼ね合いから最後にくることは判断できよう。Cは、「普通選挙」などの文言から普通選挙法(1925年)などを連想すれば大正時代頃のことを指しているとわかる。Dは、「殖産興業」とあるから、明治維新ごろのことを指しているとわかる。以上より、古い順にDACB。よって、【解答】ア。

 

大問5 公民分野

小問1 アは憲法(以下、法名略す)25条1項の生存権を、イは14条1項の平等権を、ウは22条1項の経済的自由権を、エは15条1項・2項の公務員の選定・罷免権等をそれぞれ指している。よって、【解答】ア。

小問2 記述の内容は、労働時間や休日、賃金といった労働条件について述べたものである。よって、【解答】ウ。

小問3 文章Ⅱ第1文より、所得税が「20兆円を下回って推移してい」ないアの時期は消える。同第2・3文より、「法人税」が「増加から減少に転じ、その後増加してい」ないこと、「消費税」が「10兆円前後で推移し、税率が変化してい」るイの時期も消える。同第4文より、「酒税」が「1.5兆円前後で推移してい」ないウの時期も消える。以上より、残るのはエ。よって、【解答】エ。

小問4 平成26年に既出の社会保障費に関する現代的課題。若年層の減少、高齢層の増加による若年層の負担増という背景知識は常識。本問では、「社会保険料による収入と社会保障給付費の差に注目」せよ、とあるので条件に沿って記述すれば解答が得られるだろう。

大問6 複合問題

小問1 まず地図と表Ⅰより、森林面積が最大であることからアがブラジル(A)、針葉樹伐採高が最大であることからイがカナダ(B)とそれぞれわかる。勝負はこのあと。文章Ⅱによると、第1文から「針葉樹が多い」、「州を代表する農業国」とあるから、インド(C)とフランス(D)の特徴に合致するのは後者。本問では、このあたりで切り上げてよい。よって、【解答】はウ。

念のため第2文を検討すると、「1985年と比べて2011年には、木材伐採高が増加している」のに「森林面積の割合が増加している」ことは、残る表Ⅰウ・エに共通した特徴であり、判断できない。この後に続く、「2011年における木材伐採高に占める針葉樹伐採高の割合は、1985年に比べて減少している」のがいずれかを検討することになる。

ウについて検討すると、2011年の割合は、22250/55041×100より、だいたい22000/55000×100=40%。1985年の割合は、19481/38999×100より、だいたい20000/40000×100=50%。両者を比較して「2011年……の割合は、1985年に比べて減少している」と言える。

これに対し、エについて検討すると、2011年の割合は、12165/331969×100より、だいたい12000/332000×100=3.6%。1985年の割合は、9132/245029×100より、だいたい9000/245000×100=3.7%。両者を比較して「2011年……の割合は、1985年に比べて減少している」と言える。

そうすると計算上、決め手に欠けることになってしまう。こうした場合は、相対的に判断することが必要となろう。そうだとすれば落差約10%に相当するウをもって正解と判断すべき。

もっとも、インド(C)は、文章Ⅱ第2文前半にいう「18世紀後半には、市民を中心とした、自由で平等な社会を目指す動きがあった」という市民革命の内容が当てはまらない。上記のような数値の計算をいたずらに追わずに、知識で決着をつけるのが得策な問題かもしれない。

小問2 アについて年代を特定することは困難だろう。したがって、アの判断は後回し。イについて、環境破壊が経済優先の価値判断先行で行われていた時代背景は、歴史分野にとどまらず国語の作文問題でも頻出の常識。環境庁の設置年代(1971年。2001年に環境省に格上げされ、今日に至る)を覚えていなくても、高度成長期のことではないかと推量してほしい。ウについて、「欧州連合」が成立したのは1993年のマーストリヒト条約。これを覚えていた受験生は多いと思われる。エは、「中華人民共和国……が成立した年」、すなわち1949年のことを述べている。アについて不安を残しつつも、イを選ぶべき。よって、【解答】イ。

小問3 文章Ⅲ第1文より、「20世紀初めまでに、……植民地として分割されたが、20世紀半ば以降に多くの国々が独立」とは、アフリカ分割と1960年のいわゆるアフリカの年のこととわかる。したがって、記述すべきはアフリカ州となる。そこでグラフⅠを見ると、①森林面積の減少と、②農地面積の増加が読み取れる。次に表Ⅱをみると、③人口が急激に増加していることが読み取れる。以上、①~③を総合すると、人口増加に対応するために、森林を農地に改変した、ということがわかるので、その旨を述べればよい。

【対策】

1.本年の出題傾向の変化

本年の出題傾向における変化とは、知識を重視する問題傾向への変化が読み取れるということである。従来、資料読解の問題については、当該問題において問われている内容について確たる知識がなくても、与えられた資料を読み解くことで解答を導くことができ、ややもすれば、そうした読解をしないと解答が得にくい出題傾向すら見られた。したがって、受験生・指導者としては、知識の暗記についてそれほど厳格な立場をとる必要がなかった。

ところが、本年ではそうした傾向が転換されたように感じる出題が多い。端的に言って知識を重視する傾向が現れ始めたように思われる。特に顕著なのは本年大問6である。小問3の記述問題では、議論の対象がアフリカ州であることがわからないと採点されない。では、アフリカ州についてはいかに判断するか。それは、文章Ⅲに述べられたヒントを手掛かりにするほかない。つまり、判断するに足る知識を持たない受験生はその時点で門前払いとなる。

このほか、同大問小問2もこうした系統に属すると思われる。本小問では、知識を前提としない場合、選択肢ウ・エが残る。そこで、文章Ⅱをみると、5桁÷6桁×100というパーセンテージを計算した大小比較のもとで答えがでるかのようなヒントがある。したがって、知識に乏しい受験生が例年のごとく計算に手を付けたことが考えられる。しかし、上記解説にも述べた通り、面倒な計算をしたうえでもなお厳密には選択肢が絞り切れないという、ここまでくると意地の悪さとも言いたくなるような出題までなされた。これに対し、知識をきちんと身につけていれば、かかる計算を一切必要とせず、容易、最短、確実に正解にたどり着ける。この辺りに、今後の都立入試の方向転換的な香りがする次第である。

2.前記変化を受けた今後の社会・入試対策の在り方

こうした傾向が今後維持されるかは不透明ではある。しかし、大は小を兼ねるのだから、危機管理の観点から勉強の強度を上げる必要がある。端的に言えば、知識の暗記をいとわず、可能な限り背景事情・理由も含め理解しておく、いわば骨太な学力を身につけておく必要性が高まった。そうすると、従来のような勉強ではとても対応できないのだから、教科書の精読、各種問題集の基礎から応用レベルの幅広い問題にあたっておかねばならないだろう。特に、井草や豊多摩レベル、それを超える小金井北レベルの学校、あるいは西・国立といったグループ作成校レベルの志望校を突破したい受験生には喫緊の課題といえ、早急に勉強に着手する必要がある。

 Posted by at 2:24 PM

平成28年度都立高校入試【理科】入試問題分析

 入試問題分析, 平成28年度  平成28年度都立高校入試【理科】入試問題分析 はコメントを受け付けていません。
3月 032016
 

【総論】
難化。平均点が50点を下回る可能性もあると感じている。出題形式については昨年と変更がないものの、昨年度までと異なり、ほとんどの選択肢問題で2択に絞ることが難しくなった。また、各大問ごとの問いの難易度の幅が広くなり、基本的なものからかなり難しい問いまで配置されており、息をつく暇がなくなった。(この投稿につきましてはいずれ修正を入れることとなると思います。あらかじめご承知くださいませ。)
※大問3問1について修正しました(16/03/18)。

【各論】
大問1 小問集合

問1 模式図から深成岩の表面のものと判断すればよい。基本レベル。
問2 それぞれの力の矢印をどこから書き始めるかを確認すればよい。重力は物体の中心。垂直効力と摩擦力は接する面の中央から。基本レベル。
問3 栄養分が最も多いのは小腸から肝臓の間。アンモニアのが最も少ないのはアンモニアを尿素に変える働きをする肝臓を通った後。アンモニアの量が少ない部分がが問われたのは初めてではないか。基本レベル。
問4 重量パーセント濃度の計算だが、溶解度を越えた部分は水に溶けていないので、36÷136×100の式で濃度を計算することになる。やや難しいレベル。
問5 スクリーンの位置が焦点距離の2倍であることから、この場合は物体をスクリーンと反対側の焦点距離の2倍の位置に置くと結像するという知識が必要。基本レベル。
問6 震源からの距離と初期微動継続時間は比例の関係にあること、地震の規模を表すのはマグニチュードであること、の2つの知識を押さえればよい。基本レベル。

大問2

問1 それぞれの生物のいずれがもう一方を捕食する関係にあるか、また分解者が有機物を無機物に変えていることの知識を問う。基本レベル。
問2 音は振幅が大きいほど大きな音となり、振動数が多いほど高い音になる知識を問う。基本レベル。
問3 指定された気温と湿度の空気に含まれる水蒸気量は1㎥あたり21.8×80/100=17.44g。この空気を15℃まで冷やすと17.44gから18℃の飽和水蒸気量を引いた差のおよそ2.0gが水滴となる。基本レベル
問4 まず、状態変化をしても変わらないのは質量。その際の体積比は密度が小さいほうが体積が大きくなるので、計算をせずとも同様の関係にある比を選択すればよい。やや難しいレベル。

大問3 天体[中3内容]

問1 見えている金星の形は円形に近いため地球からは離れた位置にある。また月と金星と火星がほぼ同じ方角にあり、地平線に近い順に火星,金星,月の順に並んでいる。この順に見えるの選択肢をしぼり、金星の形から解答を決める。やや難しいレベル。
問2 図4〜7のときと異なり、東の空に月と金星が見えていることから、ともに光の当たる場所が図2のときと反対になる。やや難しいレベル。
問3 選択肢Aについて「黄道付近に観察できる」を<結果2>に記述されている「地球と金星と月がそれぞれ公転面するはほぼ一致している」と置き換えることができるか。選択肢B,C,Dについては基本知識。やや難しいレベル。

大問4 植物のなかま,生殖[中1,3内容]

問1 単子葉類と双子葉類の根、茎の断面のつくりの区別と、無性生殖と有性生殖の区別ができればよい。基本レベル。
問2 純系の遺伝子の組み合わせと、教科書で太字扱いとなる遺伝子の本体の名前についての知識を問う。基本レベル。
問3 両親の遺伝子の組み合わせから子の遺伝子の組み合わせを確認する表を作成し、優性と劣性の形質を確認し比を出せばよい。基本レベル。
問4 まず、Aとaの数は組み合わせが変わるのみなのでそれぞれの数が変わることはない。次に並葉と丸葉の比率についてだが、これは教科書の知識からは解答ができない。地道に遺伝子の組み合わせを確認するしかない。子の代の並葉と丸葉の比率を確認すると3:1、さらに自家受粉による孫の代の並葉と丸葉の比率を確認すると5:3となる。ここから丸葉の比率が上がっていることが確認できるので、「3:1」ではなくなることがわかるため解答が特定できる。難しいレベル。

大問5 イオン[中3内容]

問1 水素を判別する方法と電気分解の仕組みの理解を問う。基本レベル。
問2 生成した塩である硫酸バリウムは濁る、つまり沈殿となることが問題文からわかるので、水に溶けにくいと判断できる。またその場合は電離していないのでイオンでなはない。基本レベル。
問3 基本的な化学反応式。基本的レベル。
問4 塩酸と硫酸を同じ体積10㎤を中性にするために加えた水酸化ナトリウムの体積は、硫酸に加えた量が塩酸に加えた量の半分になっているので、硫酸に加えた水酸化物イオンの数は、塩酸に加えた量の半分となる。中性であるので、加えた水酸化物イオンと結びついた水素イオンの数は同数となる。したがって、硫酸に含まれる水素イオンの数は、塩酸に含まれる水素イオンX個の半分となるので1/2X個。中性になれば水素イオンはなくなっているので、解答を特定できる。イオンの濃度と体積の関係は、教科書では発展的内容として扱われている。やや難しいレベル。

大問6 電流と磁界[中2内容]

問1 実験器具の取り扱いと使い方。基本レベル。
問2 オームの法則を用いて電流と電圧を求め、さらに電力を算出する。ひとつひとつの計算は基本的だが、解答に至るまでのステップがやや多い。やや難しいレベル。
問3 まず、「Cool」と「Hot」のそれぞれのときに風の強さに変化がないことを問題文から確認する。するとモーターの電圧が一定であるために電熱線をonにしてもoffにしても風の強さが変わらないということがわかる。仮に、電熱線とモーターを直列につないでいるのであれば、「Cool」と「Hot」のそれぞれのときにモーターにかかる電圧が変わる。すると「Cool」と「Hot」のそれぞれの際のモーターの電力が異なる。電力が異なればモーターの動きに変化がでることになるので、風の強さを調べる吹き流しの動きに変化がでる。何を記述すべきか迷うだろう。ポイントは風の強さが電圧にかかわりがあることをつかめるかどうか。難しいレベル。
問4 エネルギーの変換について。基本レベル。

【対策】
比較的難しくなった過去2年よりさらに難化している。一問一答的な知識だけでは対処できないケースが増えており、知識に対して本質的かつ応用的な理解が求められている。また、本年度については扱われている分野の半分以上が中3の学習内容で、しかも多くが苦手としやすい部分を取り扱っている。平成25年頃までは読み取りを間違えなければ多少の知識不足もカバーできたが、今年度は常に正確な知識の運用が要求されており、この2,3年の出題状況からから今後もこの傾向は続くものと考えたほうがよいだろう。もっとも、他府県の入試と比べて優しい部類に入る都立高校の入試が標準のレベルになっただけであるとも言える。

入試の対策としては、用語や知識をしっかり把握するのは当然のこととして、高得点を目指すのであれば、それぞれについてきちんと説明ができるレベルまで理解を深めたい。まずは単元ごとに問題演習を重ねて知識の定着と問題に慣れるのが最初だろう。その点をクリアできたならば、入試の総合問題に数多く触れていきたい。以前は、都立入試の理科対策は都立の過去問や類題を利用していればおおむね結果を出すことができたが、今後は他府県さらに国立レベルの入試問題など歯ごたえのある問題にチャレンジすることが不可欠である。得点力の向上のために、これまで以上にじっくりとトレーニングを積む必要がある。

(文責:伊藤大介[理科担当])

 Posted by at 1:07 PM