都立高校平成26年度国語[共通問題]問題分析

全体的な難易度は例年通り。

問題1,2番の漢字は,書きの「陸橋」が一番難しいといった程度で,漢字検定3級レベルの知識が定着していれば難なく得点できる。私立では偏差値50程度の学校の漢字の問題レベルができていれば問題ないだろう。中学3年までの漢字練習帳を繰り返し行って確実に得点したい。

問題3は25年度と同じくらいの3ページにわたる長文だった。今年は理科の教師を主人公に松葉杖の少年と交流をしてゆく小説。抜粋されている文章は読みやすく情景や登場人物像,心情も理解しやすい。問1は昨年も出題された情景の説明を選択する問題であった「紅」「黄金色」の色彩表現や「海面にほどこされた金箔が少しずつはがれ」などの文章描写をしっかりと読み取れているかが問題になる。難易度は少し高い。問の2〜4までは基本的な心情を問う問題になっており,傍線部前後の出来事をしっかりと読んでいれば正解を導くことができ,確実に得点したい問題である。問5は24年度まで続いた人物の気持ちを理解し適切な返答を求める形式に戻った。難易度は例年と変わらず平均的である。30〜50字程度の文章を日頃から書けるようにすることが問5を正解する近道になるだろう。

問題4の今回のテーマは「地球環境」になっている。また今回は一般的に扱われる環境問題の文章とは切り口が異なり「生物多様性」の視点から環境問題を論じているため,設問自体の難易度は例年通りだが,受験生にとっては読み慣れた内容ではなかっただろう。ポイントは「生物多様性」が人間中心の環境の「持続可能性」にどのような役に立つのかを読み取れるかである。問1は傍線部中の指示語「それ」を明確にし,本文では「多岐にわたる要素を含む」という内容をしっかりと理解して選択肢を選ぶことが必要。問2は本文での「持続可能性」の意味を問われている。本文では人間に適した環境を残すことが「持続可能性」と述べられているので,それに適した選択肢を選ぶ。やや難しい。問3は段落の役割について例年通りの問題が出題された。第10段落の冒頭の内容理解とともに,結論との関連性を考えて解答すればよい。問4は傍線部中の段落冒頭が解答の根拠となる。問5は例年通りの作文であったが,今回は「環境の持続可能」というテーマを身近な問題に引き寄せて文章にすることが難しく,時間を多く費やした受験生も多いと思われる。例年以上に書きにくい作文であった。早くから感想文ではなく,自分の意見文を書く練習をする必要がある。読解では,高校受験教材で該当する分野を解き,受験までに私立の中堅レベルの論説文まで読めるようにしておきたい。また語句の意味や文章が書かれていることの背景にまで触れておく必要があるだろう。

問題5は昨年と同様,対話形式の文章とテーマに上げられている文章の原文とその現代語訳となった。今回は「百人一首」と藤原定家の考えがテーマの中心となっており言葉の大切さについて話題が進んでいることを読み取る。問1は傍線部のあとの文章をしっかりと読めば解答できる,ここはしっかりと得点しておきたい。問2は発言者の意図を問う問題。「つながる」というキーワードがこのあとの会話の中心になっていることに気がつけば選択肢を選ぶことができる。問3は現代文から古文に相当する部分を抜き出す問題。ここは易しい。問4,ここは対話の内容がどのように完結したのかを理解させる問題。難易度は高くないが,試験時間が足りなくなってミスをする受験生もいたのではないか。問5は例年出題される単語の意味と単文作成。「もとより」の意味を理解し,主語と述語のある文を作成する。文脈からも「もとより」の意味を理解できるため,易しめ。基本的に古文を読むというより,対話の進行と話されているテーマをしっかりと理解することが必要となる。古文知識を必要とする問題はあまり出題されないので,繰り返し過去問や都立模擬試験等を使って演習するのがよい。

全体的に難易度も変わらず平均点も大きく変動しないと思われる。国語の対策としては,まず「記述力の向上」と「論説文への対応」が重要になってくる。特に論説文はいろいろなテーマの文章を読み,そこから語彙力を増やしたり主張を読み取ったりする訓練が必要だろう。また読解力は短期間で身に付くような物ではないので早い時期からの文章慣れが望ましい。