都立高校平成27年度理科問題分析

全体コメント:昨年よりやや易化。問題文や資料の情報量が多く,解答に必要なポイントを確認するのに時間を要する点は昨年と変わらず。各設問自体の記述が素直になったため,やや解きやすくなった。80点前後までは取りやすいが,9割を取るのは難しいだろう。なお,配点に変更があった。例年大問1,2が4点×10問,以降各設問ごとに5点(記述と記号合わせての問い含め)から,全問各4点に。

学習の対策:まずは教科書にある理科の用語を確実に身につけ,公式等を使いこなせるようにすること。問題のレベルとしては基本的なことをしっかり理解していれば対応できる。計算もそれほど多くなく,複雑なものはない。注意する必要があるのは問題文の長さや図表やグラフの多さ。「何を問われているのか」「どの図表を確認すればよいのか」を丁寧に正確に読み取るトレーニングをすること。

大問1:小問集合

問1は動物の体のつくりについて。基本的。問2は実験の操作について。基本。問3は金星の見え方について。基本例題レベル。問4は電解質の溶け方について。基本。問5は植物の増え方と体の作りについて。種子植物以外の体のつくりをしっかり把握しておく必要がある。基本。問6はオームの法則を使いこなせれば確実に答えにたどり着く。また,直列つなぎと並列つなぎの性質の違いを理解していれば比較すべき選択肢は限られる。

大問2:小問集合

問1は密度に関する問い。どのよう比較するのかでやや迷うか。問2は刺激と反応について。基本。問3は音の伝わる速さについて。基本的な計算問題。問4は天気図の読み取り。最終的には低気圧と高気圧の風の吹き方が決め手となる。やや難。

大問3:地層(中学1年範囲)

問1は示相化石と示準化石の知識についての問題。基本的。問2は柱状図の比較の問題。全体の地層の重なりを示す図3でE地点の場所を確認すればよい。苦手とする生徒が多いが,出題形式としては典型的。問3は選択肢はれき・砂・泥の堆積する環境の違いについて。選択肢の文章が長いことに惑わされないことが重要。問われている知識は基本的。記述は都の公表した正答にある「流水によって運搬される」の部分を書ききるのはやや難しいか。

大問4:植物(中学1年範囲)

大問で扱う実験は教科書に必ず出てくるもの。問1の選択肢左側は実験のしかたの基本の確認。実験の流れを押さえていることが必須。選択肢右側は実験結果の読み取り。こちらは基本的。問2は呼吸と光合成についての知識と実験結果の読み取り。基本的。問3は必要な情報を拾うことにさほど手間はかからないが,正答にある「成長に必要なデンプンが多く作られる」を明解に書けたかどうかがポイント。

大問5:化学変化(中学2年範囲)

問1は化学変化の際の物質の質量比について。基本的。選択肢の形式が見た目としては新しいが戸惑うほどのことではない。問2は,まず選択肢A,Bについては問1と同様に化学変化の際の物質の質量比について。次に選択肢C,Dは実験結果の読み取りを踏まえ,条件を変えた別の実験をするときの結果の予測。基本的。問3は実験1の結果1から酸素と結びついたマグネシウムの量を割り出し,反応していない残りのマグネシウムの質量を求め,結果2と照合する。的確なデータの活用を求められる。解答のプロセスがやや難。

大問6:運動とエネルギー(中学3年範囲)

問1は力の大きさについて。基本的。問2は仕事の大きさの計算とエネルギーの移り変わり。基本的。問3は記述問題については「平均の速さ」を表すグラフの書き方を押さえられていたかどうか。やや難。問3は結果2でも確認でき,また動滑車のしくみを知っていればなおよい。基本的。

文責:伊藤大介(中学部理科担当)