平成31年度都立高校入試【社会】入試問題分析
【総論】
難易度は例年よりも難化したと思われる。前年との違いは大問1の始めから完全正答をしなくてはならない問題が出題されたこと。それに伴い完全正答の問題が昨年の7題から10題に増え、解答にかなり時間がかかる問題となった。
分野ごとに見ると、地理分野に関してはヒントが少ない問題や細やかな資料の読み取りが求められる問題も出題され難易度は高くなった。歴史分野に関しても世界地理と関連した問題の出題があったことからやや難しいと思われる。また歴史は近現代で多少細かな年代を聞いてくるようになってきたので,今後はやや細かな部分まで年表を暗記する必要性を感じる。公民分野では地理、歴史と比べると今年度は標準的な難易度といえる。地理同様にしっかりと資料の読み取りができるようにしておくことが重要になる。
今後のポイントとして地理分野はヒントとなるキーワードや表・グラフの特徴をもとに国名や県名を探せるようになることは必須であり、知らない問題に当たったとき、知っている知識から正解を導き出す練習も必要になる。歴史はより細かい部分まである程度年表を押さえること。地理と歴史はどこを根拠に正解したのかが重要になる。また今後は日本だけでなく世界とのつながりも押さえる必要がある。公民分野は例年通り平成から現代までの出来事をしっかり順序づけることが安定した成績を取るポイントになる。
【問題別】
以下大問ごとに難易度と概要の解説に入る。
なお難易度は標準・やや難・難の順とした。
大問1
問1 地形図から移動した経路を写真と文から選択する問題。問題自体はよく読めばできるが、完全正当をしなくてはならない分、文章をよく読まなくてはならず時間がかかる。【やや難】
問2 歴史上の人物を答える問題。「東海道中膝栗毛」をヒントにする。【標準】
問3憲法条文が保障する権利を答える問題。「国民審査」や「総選挙」がヒントになる【標準】
大問2
問1 説明文が示している経路と都市の気候グラフを答える問題。時差計算が例年よりもやや複雑。時差が出せれば都市は簡単に選べる。【やや難】
問2 表から国を選択する問題。漁業関連の説明になっているがヒントが少なく見つけにくい。しかも完全正答問題となっているため正答率は低いだろう。【難】
問3 表と説明文から国を選ぶ問題。表と説明文の読み取りからある地点まではたどり着くが,その地点が「カンボジア」であると答えられる生徒は少ない。例年出題させる国(タイなど)ではないと判断し,消去法で進めることが重要。【やや難】
大問3
問1 説明文からそれぞれの県を選ぶ問題。各説明文の中に特徴的な説明が多く見られるためここは正解しておきたい【標準】
問2 表と説明文から正しい選択肢と地域を選ぶ問題。「西陣織」から京都を選択できるが細かな資料の読み取りを必要とする。時間もかかる。【やや難】
問3 資料を使った記述問題。資料をしっかりと読み取れば難しくはない。【標準】
大問4
問1 歴史の並び替え問題。キーワードから時代を推測するやり方を使えば難なく答えることができる。例年通り時代がわかりやすく分かれている【標準】
問2 引用文から年代と日本町の場所を答える。「アユタヤ」をヒントにタイを選択する。この問題は細かな知識が必要。【難】
問3 各鉄道の説明をしている選択肢を選ぶ問題。地理的な要素が多く、その分ヒントも多い。【標準】
問4 明治から平成までの近現代の並び替え問題。昭和の並び替えで苦戦した受験生がいた。第2次世界大戦以降の出来事はしっかりと並び替えできるようにする必要がある。【標準】
大問5
問1 グラフと説明文から記述する問題。どちらの割合の伸び率が高いのかを答えないと正解にならず、両方伸びていると答える受験生が多かった。【やや難】
問2 表から説明文の項目を選ぶ。細かな読み取りが必要でなおかつ時間がかかるため難しい。【やや難】
問3 グラフと説明文から読み取れることを記述する問題。説明文の後半部に着目し、大きく下落しているものに注目する。【標準】
問4 両院協議会が行われた時期を選択するもの。両院協議会の意味を知っていないと解答できない。【標準】
大問6
問1 説明文から国名を当てはめる問題。各説明文にその国を表す特徴的なヒントがある。【標準】
問2 歴史の並び替え問題。特徴的なキーワードが多く落ち着いて解けば正解できる。【標準】
問3 グラフをヒントに説明文に当てはまるものを選択する問題。説明文を読めば解答できる。【標準】
【塾の指導で心がけていること】
最小限の知識を持っていれば直接対応できる出題は大きく減りました。定期テストをその場しのぎの学習で終わらせず,都度基本知識はしっかり定着させ,その上で中3の夏までには既習部分では入試問題に対応できる入試学力を養うことが必要です。入試が近づく中3の二学期以降は、知識の枝葉を広げ,長い資料文を読みこなし、適切にヒントを拾い上げて、解答につなげるトレーニングが中心になります。
忙しい日々を過ごす生徒が、こうした対策を中3の秋以降に残された期間のみで終わらせることは難しく、比較的高得点勝負になりやすい都立入試で、志望校合格に必要とされる得点を安定してとることは至難の業と言ってよいでしょう。当塾ではこうしたことを踏まえて、1年以上の時間をかけて丁寧に基礎を繰り返し、様々な問いの形式に触れながら、新しい問われ方をした場合でも柔軟に対応できる力を身につけられるよう,カリキュラムを設定して指導しています。